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灘󠄀󠄁許容字体

(なだ)とは、海流潮流が速い所または風浪が激しく航行が困難な海域[1][2]とも書き表される。ただし、波の荒い水域だけでなく沿岸の水域や航海水面を指す場合もある[3]

概念[編集]

「灘」は日本古来の用字としては海部に用いられたものの一つで、明治時代以前の文献では海部に、灘などの呼称が用いられた[3]。『字鏡』によると「灘」は「わたりぜ」または「かた」と訓しており本来は波の荒い水域を意味している[3]

ただし、「灘」には鹿島灘熊野灘のように沿岸の水域という意味で用いられていると考えられている場合もある[3]。また、「灘」は瀬戸内海では航行水面の呼称として用いられてきたと考えられている[3]

「灘」は海象や気象などから経験的に大まかにつけられた呼び名で、それぞれの海域には明確な境界線があるわけではない[1]。漁業統計や環境調査などで「湾」や「灘」の海域区分が行われる場合でも資料ごとに範囲が大きく異なる場合がある[4](水産庁漁業調整事務所資料、環境省「自然環境保全基礎調査」など[4])。

なお、1950年まで水路誌など公的資料では「和泉灘」と称されていた大阪湾のように公的な呼称が変更された例もある[3]

灘の名称を有する海域[編集]

海上保安庁の水路図示に記載されている14か所は太字で記載[1]

出典[編集]

  1. ^ a b c マリレ用海洋速報” (PDF). 第十管区海上保安本部. 2019年10月10日閲覧。
  2. ^ ”. goo辞書、デジタル大辞泉(小学館). 2019年10月10日閲覧。
  3. ^ a b c d e f 中西良夫「海峡地形の呼称について その呼称起源と妥当性の問題」『地図』第1巻第4号、日本地図学会、1963年、18-22頁、doi:10.11212/jjca1963.1.4_182020年2月25日閲覧 
  4. ^ a b 湾・灘ごとの水環境等の状況に係る整理 【中部】”. 環境省. 2020年2月25日閲覧。